競馬というギャンブルは100円から馬券を購入することができるため、多くの競馬ファンが気軽に馬券を購入して楽しむことができます。
しかし、馬券を購入したことの競馬ファンの中で「競馬の税金」について気にしたことがあるという方は一体どのくらいいるでしょうか?
競馬で馬券を購入する時に税金の心配をする一般の競馬ファンはまずいないでしょう。
実際、競馬を含む公営ギャンブルではなんと8割が税金未納であるということがわかっています。
しかしながら、今後はインターネット馬券の監視が強化されることがわかっており、今まで税金について気にしたことがないという人もこれからは税金について気にしなければならなくなるかもしれません。
過去には「競馬のハズレ馬券は経費と認められるのかどうか」という裁判が行われ話題になりました。
この記事では、過去に行われた競馬の税金をめぐる裁判で納税者の主張が受け入れられた3つの事例についてご紹介していきたいと思います。
目次
競馬の税金のしくみについて
競馬のハズレ馬券裁判について知るためには、競馬の税金のしくみについて知っておく必要があります。
競馬の税金は一定ではなく、馬券の購入の仕方によっても計算の仕方が異なります。
ここからは競馬で得た利益が「一時所得」と見なされる場合と「雑所得」と見なされる場合の違いについて簡単にご紹介していきます。
一時所得の場合
普通に馬券を買って競馬を楽しんでいる競馬ファンの場合、ほとんどが一時所得として見なされます。
お祭り感覚でG1レースの馬券を購入することがあるという人、競馬新聞を買ってがっつり予想をして馬券を購入している人。
予想方法は様々だと思いますが、競馬の収支管理をきちんとしているという人は少ないでしょう。
一時所得の場合、50万円未満であれば税金を支払う必要はありません。しかしながら、年間で得た払い戻し金額の合計が50万円を超えてしまうと税金を支払う義務が生じます。
一時所得の場合の税金の計算式は「馬券の払い戻し金額ー当たった馬券の購入金額ー50万円)×二分の一」となります。
注意しなければいけないのは、一時所得の場合、ハズレ馬券は経費として計上することができないということです。つまり、その分税金が高くなってしまいます。
雑所得の場合
競馬の払い戻し金額を雑所得と見なせるのは、利益を得るために継続して馬券を購入し続けている場合です。
雑所得のとなる場合はハズレ馬券を経費にできる可能性もあり、税金の計算方法は「収入(払い戻し金額)ー経費(馬券購入代金)=税金対象額」です。
下記でご紹介する裁判事例の中には、改良した競馬予想ソフトを活用し、馬券を無差別に購入するという買い方で利益を得ていた人のケースがありますが、この場合は機械的かつ継続的に馬券を購入して利益を得ようとしていたということでハズレ馬券も経費として認められています。
競馬のハズレ馬券裁判で納税者が勝訴した3つの事例
それではここからは、実際にあった競馬のハズレ馬券の税金をめぐる裁判をご紹介していきたいと思います。
投資競馬のように、利益を求めて継続的に馬券を購入しているという人は意外にもたくさんいます。
2015年の裁判事例
2015年に最高裁で「ハズレ馬券も経費として認める」という判決が出て大きく話題になったのが大阪府在住の男性のケースです。
この男性は「卍」と呼ばれ、現在は本も出版している有名人。
卍氏は2007年〜2009年の間に28億7000万円の馬券を購入。そして30億1000万円の配当を得ています。利益は1億5000万円ですが、これを申告しなかったことで刑事告発されました。
検察は懲役1年を求刑。競馬をやってまさかの懲役1年求刑ですから、驚きですよね。
卍氏が稼いだ1億5000万円の利益に対し、大阪国税局が求めた課税額は5億7000万円と、利益を大きく上回るものでした。
実際に得た利益は1億5000万円にもかかわらず、なぜ課税額がそこまで大きくなったのかと言えば、課税対象が払い戻し金額である30億1000万円であるから。
当たった馬券の購入金額しか経費として控除されなかった結果、課税額が5億7000万円にも膨らんでしまったのです。
しかし「ハズレ馬券を経費に含める」と認めたことで脱税額は5億7000万円から5200万円にまで減少となりました。
ハズレ馬券を経費に含めるかどうかでここまで課税額が変わるのです。
2017年の裁判事例
2017年の裁判事例の北海道に住む男性は、インターネット上で馬券を購入できるサービスを使い、6年間で数億円〜数十億円の馬券を買い続け、多い時には年間2億円の利益を得ていました。
しかしこの男性の場合、払い戻し金額の申告をしっかりと行っていました。
にもかかわらずなぜ裁判になったのかと言えば、男性が「雑所得」として申告したものを国税局が認めなかったからです。国税局側の主張は「一時所得である」ということでした。その結果、1億9000万円もの追徴課税を求められます。
このケースでは最終的に「男性は6年間勝ち続け多額の利益を得ており、一連の馬券購入は経済活動の実態がある」とし、原告の逆転勝訴という結果となりました。
この北海道の男性のケースの場合、男性はしっかりと税金の申告を行っていたにもかかわらず訴訟となったこともあり、国税局には競馬ファンからの批判が殺到しました。
2019年の裁判事例
2019年の事例は、高松市の男性の事例で、所得税の見直しを求めた訴訟です。
税務署はハズレ馬券の購入金額を経費と計上し所得税を見直すのを認めませんでしたが、東京地裁がこの決定を取り消し、ハズレ馬券の購入金額が経費と認められました。
最高裁は2015年に「営利目的で継続的に購入していた場合、算入できる」との判断を示している。今回の訴訟で税務署側は「購入額は年間数千万円にすぎず、外れ馬券代が30億円近くに上った最高裁判決の事案より小規模で、継続的ではない」と主張。
しかし古田孝夫裁判長は、営利目的で継続的に購入していたと判断した。
この事例の場合、前の2つの事例に比べると金額は少ないものの、ハズレ馬券が経費として認められることとなりました。
まとめ
競馬のハズレ馬券の税金をめぐる裁判についてご紹介させていただきましたがいかがでしたでしょうか?
ハズレ馬券裁判事例の中でも最も有名なのが2015年の事例ですが、この事例がメディアでも取り上げられたことで「投資競馬であればハズレ馬券であっても経費として計上できる」としてどんどん馬券を買って利益を得ている人が多いようです。
しかしながら、すべてのケースで納税者が裁判に勝っているという訳ではありません。中にはハズレ馬券を経費だという主張が認められず敗訴しているケースもあります。
雑所得とみなし、ハズレ馬券を経費とするかどうかを判断するのは裁判官です。投資のような買い方で馬券を購入していれば100%ハズレ馬券を経費として計上することができるというわけではないため、くれぐれも注意しましょう。
2020年からはインターネットでの馬券購入で得た払い戻し金額に対しての監視体制が強化されるということが報じられています。
これまでは競馬で多額の利益を得ていても税金の申告を行っていなかったという人も、これからはしっかりと収支管理を行い、税金の申告を行う必要が出てくるかもしれません。